それは、2011年3月8日午後、東日本大震災で工場が流される三日前のことでした。それまで開発してきていたFM工法で、使用する材料の集成材が高価になって来ていたので、なんとか接着剤なしで安価な集成材化できないものか、石巻市の山大という材木屋さんのプレカット工場に、相談をしに来ていました。そこは、これまで集成材を耐力壁として活用した建築工法の住宅を、16棟程の住宅を作ってくるなか、よく相談をしに来ていた工場でした。その頃開発していた工法は、30㎜厚の板材を接着した集成材で、単価も割安な中断面集成材(120×450×6000)mmを使用した、これまで類を見ない、木造の壁式工法でした。試行錯誤を繰り替えし、方法が定まるまでに10年も掛かり、建築と解体がし易く、解体部材も再使用できるように考えられたものでした。
その工法の集成材の単価と加工賃が、設計も複雑になったせいか、割高になり、最初の頃の単価で作ることが難しくなってきていました。それとその集成材を廃棄する際、800度以上の高温で燃焼しないとダイオキシンを発生させる可能性があるという話も聞こえてきていました。使い方も、通常の集成材ほどの強度を要するわけではなかったので、何とか接着剤無しの安価な集成材が作れないものか、と相談しに来ていたのでした。話をしているうちに、30㎜厚の板は造作材等に活用され、むしろ芯材の105角の材が余ることの方が多いとのことでした。それなら、角材に臍穴を空けてそれに、3〜4本の貫材を串刺すことで、幅90cmの接着剤なしの集成材にしたらどうか、となりました。それでそれを半月後までに試作し、強度がどれほど出るか試験してみようとなりました。
開発物語